二 億 円
彌生様の言葉を遮りたかった。
僅かにしか出なかったはずの声は何事もなかったように私の口から零れ落ちた。
嬉しい反面、「しまった。」と後悔の気持ちが湧き上がる。
「あっさりと、声が出るのですね。
私の名は呼べなかったくせに。
それとも、回復していたのを黙っていたのですか?」
ガ タ ン !
いきなりドアに叩きつけられ、衝撃で唇を噛んでしまった。
「いっ…………やぁ───!!」
唇に血が滲む。鉄の味が、私を不愉快にさせる。
「本当に…思い通りにならないお人形さんです。」
それだけ言い残し、彌生様は部屋を出て行った。
部屋の外からは彌生様の不機嫌そうな声と、刹那さんらしき人の怒鳴り声が微かに聞こえた。
「思い通りにならない…お人形……?」
思い通りにならない私のことが、きっと恨めしいのだろう。
でも仕方がないこと
私はお人形じゃない。