二 億 円
ひなたの部屋から出ると、少し鉄の匂いがした。
そして飛び散っている硝子の破片
思わず溜め息が出る。
「……何故、貴様がひなたの部屋にいた?」
少し離れた所から、驚きか恐怖か、固まったひなたと、此方を睨み付ける刹那の姿。
拳を握り締め、血を滴らせながら
軽蔑と嫉妬を込めた瞳で。
「おや、刹那さん。どうしてそんな所にいるのですか?しかも、拳を血塗れにさせて。何かありましたか?」
本当は分かっているんですけれど
私は優しくありませんから。
「っ…──!!ひなたを解放してやれ。もう、諦めろ。ひなたは、お前のことなんか……ひっ!!!」
ガ シ ャ ン !!
花瓶の割れる音が廊下に響く。
「っ…。」
「や、彌生様…あぶな「ひなた、どきなさい。」」
冷ややかに言い捨てれば、従順なひなたは簡単に引き下がる。
「刹那、余計な口を聞いている暇があるなら、仕事をしなさい。あなたは所詮、ただの使用人。仕事をしないのならば、消えてもらいますよ。」
その言葉は、刹那さんには一番響く言葉。
この屋敷から消えるわけではありませんから、ね。