二 億 円


身体を震わせ、唇を噛み締める刹那さんは





あの時の 君 のよう。






「彌生っ……!!」



精一杯の声で、私を呼ぶ。



「……どうしたら、戻れる?





あの時に。」




強がりな彼女がたまに見せる女の部分


それは男なら誰しもが抱く欲情を引き出す




「そんな顔、他の人に見られたらどうするのですか?」



「此処にはお前と私、そしてふたりのひなたしかいない。」



「では、お人形さんにその顔を見せれるのですか?日向はともかく、ひなたにその欲情溢れた女の顔で、何と説明するのですか?」



ぐっ、と唇を噛み締める。



「メイドとして働くと決めたのは貴女自身。契約したでしょう?もう、忘れたのですか?」



貴女はあくまでひなたがくるまでの代用品




ひなたを手に入れるまでの




私の欲求を満たす為の道具。





それが例え以前付き合っていた女だとしても、



そういう契約ですから。





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