二 億 円
いつから付き合っていたか。
両親が亡くなった理由。
別れた原因。
調べるのに時間はかからなかった。
人間は人の不幸を最も好む生き物。
愚かで、弱い。
「やはり来てくれましたね。刹那さん。」
レストランの入り口に、無表情で佇む刹那がいた。
「色々と嗅ぎ回るな。迷惑だ。」
「まあまあ。とりあえず…中に入りましょうか。」
刹那の手を取り、中へ入る。席へついてからも、相変わらず睨みつけてくるだけ。
「何故そんなに私にこだわる?お前に好意を抱いている女なんて腐るほどいるだろう。それとも、私のことが可哀想とでも思っているのか?」
嫌悪を表す眼差し。反抗的な態度。今までに感じたことのない喜びでした。
「捻くれ者は捻くれ者同士…仲良くしましょうよ。」
「お前と一緒にするな。お前は心が歪んでいる。」
「でも貴女の恋人の方が歪んでいたでしょう?」
刹那の顔が怒りに変わった瞬間でした。
「…関係無いだろう?私が、どんな男と付き合っていようが、お前には関係無い!」
「ええ。無関係ですね。僕はただの興味本位です。貴女と颯人さんに何があったのか…知りたくて。」
怒りなのか恐怖なのか。刹那さんは震えていました。
「……どこまで調べた。」
「さあ?貴女の家庭環境と颯人さん絡みの事と…彼の現在、とか。」
青ざめた顔で、私を見る彼女の瞳には、さっきまでの怒りはありませんでした。
「……誰かに、話したの?」
「いいえ。私の興味本位なので。貴女が良い子にしておけば、誰かに話すつもりはありませんよ。」
刹那は唇を噛み締め、俯く。
「僕が君へ本気であること、分かったでしょう?」
欲しい物はどんなに汚い手を使っても手に入れる。
「……何が、望みなの。」
力無く、発した言葉に、私は微笑みました。