二 億 円





「口、治してあげますからね。」


にこり、と笑い指を私の口に突っ込む。


「ぉ゛えっ──!!!!」



私の苦しむ姿を見て、楽しそうに、嬉しそうに繰り返す。



「がっ…かはっ…!!ごめ、なさ……!!」




苦しさで目の前が滲んで見える。口からは唾液がだらしなく垂れ、目からは涙が零れ落ちる。



「分かれば良いのです。ひなた、言葉遣いは気をつけるように、ね。」


優しく微笑みかけ、頬に手を近づけた瞬間だった。



「───次は罰を受けてもらいますよ。」






バチンッッ───!!







「い゛っ…!!!!」


思い切り頬をぶたれ、勢い余り壁に叩きつけられた。



「痛いでしょう?でもまだまだ、ですよ?」




頬の次は脚。脚の次は背中。背中の次は腕。そして腹を蹴られた。



「ヴ、ぇ…は、はあっ…」




「お腹はまずかったですかね?でもまあ、どうせ子供なんていりませんし、ちょうど良いでしょう。」




身勝手な人。

自分の都合でしか物事を考えられないなんて。


「………」


「何か、いいたいことでも?」



大有りよ。けれど


「何でも、ありません。」

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