二 億 円
逆らったところで酷い仕打ちが待っているだけ。
今は我慢して、逃げるチャンスを伺ったほうが利口。
「意外に素直なのですね。まあ、この方が私にとって好都合ですけど。」
ブツブツと呟き、やっと暴行を止める。
「けほっ…けほっ。」
こんなに痛い思いいつぶりだろうか。
「少し乱暴し過ぎましたね。でも、私に逆らったひなたが悪いのですよ?もう、してはいけませんからね?」
にこり、と笑いかけ、私の頭を撫でる。その姿は他の人から見たら優しい人物に映るだろう。
“容姿端麗で優しくて金持ち。”
羨ましい、と誰もが言うだろう。
だがうわべだけの優しさ。
人をペットか奴隷のように扱う鬼畜さ。
笑顔で暴行し続ける卑劣な人物。
それが、今目の前にいる私の飼い主。黒田彌生様。
「ひなたの髪はふわふわですね。パーマですか?」
急に普通の話を持ち出され、きょとんとしてしまう。
「ふえ?あっ…いえ、天然パーマ、なんです。」
「へえ…とても可愛いですよ。この色は…地毛ではないですよね?」
私の髪はゴールドに近い。フランス人形のようになりたかったから、高校にあがりすぐに染めた。
……即生徒指導行きだったけど。
「はい。お人形さんみたいになりたくて…」