二 億 円
“お人形”
その言葉に彌生様は口を弛ませる。
「“お人形”になりますか?」
は?
一瞬、理解できなかった。
「な、何を言って…」
「なりたいのでしょう?お人形。まあ、なるといっても私の言うことに逆らわない、操り人形ですけどね。」
クスクス、と楽しそうに笑い出す。
何が楽しいのよ…人を馬鹿にするのもいい加減にしてよ。
怒りが込み上げる。
「なんですかその目は…私に逆らうつもりですか?良いのですよ?逆らっても。痛い思いをするのは貴女ですから、ひなた。」
悔しい。悔しい。悔しい。
何も言えない。怖い。痛い思いはしたくない。
私、このまま何も言えず、言いなりになるのかな…
「余計なことは考えなくてよい。私のことだけを考えていればよいのです。私の為に泣き、私の為に苦しみ、私の為に──。』
目を細め、口角を上げ、私を優しく撫でる。
「全てを捧げなさい。ひなた。」