二 億 円
目が覚めたのは何時間後だっただろうか。
時計は21時を指している。
「あれ…彌生、様?」
辺りを見回すと彌生様はいなかった。それどころか血の一滴落ちてすらいない。
紐は相変わらず繋がったままだけれど。
「おや、お目覚めですか?お人形さん。」
扉の方を見ると、にこりと微笑む彌生様がいた。
手にはトレーを持ち、パン一つにココアが乗っている。
「珈琲の方がよかったですか?」
少ししょんぼりとしながら私に尋ねるその姿は、先ほどの姿からは誰も想像もつかないだろう。
「あ、いえ…ココアの方が好き、なので…。」
「それなら良かった。さあ、お腹が空いたでしょう?食べなさい。」
にこりと微笑み、頭を撫でる。
「あ、はい…ありがとうございます。あれ、でも食事は一緒に取るんじゃ…」
「私は先に済ませましたので。明日からは一緒にとりましょうね。」
一緒に食事を取るには時間も遅い。私が思っていたより眠っていたから先に食事を済ませたのだろう。
「すみません…。」
「気になさらないで下さい。少し、乱暴にしすぎましたからね。次からはもう少し、考えてしますから。」
にこにこしながら恐ろしいことを言う人だ…また乱暴されるのかと思うと…いや、止めておこう。
「さあ、お食べなさい。」