二 億 円
「ひなた、着きましたよ。」
「…あのー…」
「どうしました?」
「…此処、どこですか?」
会場から出れたのは良いものの、
知らない男性と一緒に知らない場所にいる現状…
不安になるのは当たり前である。
「私の屋敷です。
今日から貴女はここに住むのですよ。」
目の前に広がる大豪邸。
純和風の御屋敷、といった感じである。
私が、ここに…?
この人と…?
「何でですか?」
「え?」
私を買った男の人は、
驚いたように此方をみる。
「…驚きました。
まさかそのような返事がくるとは…
そうですね、しいて言うならば…
貴女は私に買われてしまったから。
貴女は私に逆らえません。
ならば私の言うとおりにしなさい。
ということです。」
ニコリ、と柔らかく笑い、
私の頭を撫でる。
まるで猫を撫でるように。
「ひなた、部屋へ案内いたしましょう。いらっしゃい。」
ワザと早く歩いているのだろう、
此方をちらちらと見ながら口元を弛ましている。
何が面白いのかわからないけれど…
「フフフ♪」
あ、笑ってる。
やっぱり何か面白いことがあったんだ。
「えっと…買い主さん。
何が面白いのですか?」
「…買い主さん?」
「あ…名前…知らないから…」
「…そういえばそうですね。
私の名は黒田 彌生(クロダ ヤヨイ)。
この屋敷の主であり、
貴女の飼い主ですよ。」