二 億 円
「…ご馳走様でした。」
皿のミルクを飲むのに一体どれほど時間がかかったのだろう。普段の生活ではしないことだ。体が痛いし、舌が疲れた。
「よく出来ました。さあ、部屋へ戻りなさい。私は仕事があるので、離れの部屋にいます。用事があれば来なさい。」
こんな鬼畜に用事などあってたまるか。
「はい。わかりました。」
とは言えず、素直に返事をする。
たった二日目でこんなに素直に従う奴は滅多にいないんじゃないだろうか。
「ひなたは素直で良い子ですね。」
優しい笑顔で私の頭を撫でる。
あれ、一瞬。ほんの一瞬だけ、この感覚が懐かしく感じた。
まるで、昔会ったことがあるような…──
「ひなた?」
「あっ…はい。部屋へ、戻ります…。」
何か思い出してはいけないことを思い出しそうな気がして、考えるのを止めた。
それに、無駄なことを考えている時間はない。
逃げることだけ、考えなくちゃ。