二 億 円
部屋へ戻り、どうすれば屋敷を出られるか考えることにした。
考えることにした。
考える…ことにしたけれど…
屋敷の構造を知らない。
それに、部屋に何があるかすら把握していない。
「まずは…身近なものから、かな。」
取りあえず部屋の中から把握することにした。
「布団に机、タンス…」
そういえば、着替えはタンスの中にあるって言われてたような…でも、どうして男の彌生様が女物を持っているのだろう。趣味?
「…うわ。」
ピラピラの洋服がいっぱい。メイド服とまではいかないが、外に着ていくには抵抗があるものばかりだ。
これが本当に彌生様の趣味で集めてるとなると…いや、考えるのは止めよう。
「何か役にたちそうなものは…ん?指輪…?」
タンスの奥に少し錆び付いた指輪があった。至ってシンプルで何も変わったところは見当たらない。
「彌生様、のにしては細いかな…女物っぽいし。」
特に役には立たなそうなので無視。
部屋をあさっても役に立ちそうな物はなかった。
ピラピラの洋服 錆び付いた指輪 他には壊れた写真立て 折れた口紅 鏡の破片 それと───。
「あまり深く探索しないほうが良いよ。困惑するのも苦痛を味わうのも君だから。」