二 億 円
いきなり聞こえた知らない男の子の声。
私と同じ年位だろうか?まだ幼さの残る声にどこか愛らしい子犬のような印象である。
「あっ…えーっと…貴方は「あーーーー!!!ストップストップ!!俺に喋りかけないで。
兄ちゃ…いや、彌生兄さんに言われているんだろ?他の奴と口を聞くなって。俺も怒られるの嫌だし喋んないでくれよ。なっ?」
彌生兄さん?ってことは…
「おっ…弟「だから喋んなってえええ!!」
キョロキョロと周りを確認し、急いで部屋に入ってくるその姿はまさしく子犬である。
「はーっ!ほんっと人の話聞かないんだねあんた。彌生兄さんの怖さは知ってるんだろ?だったら俺の忠告は聞いといた方がいいって。」
「はあ…いや、その前に私と二人きりになって大丈夫ですか?」
今、この状況を見られたら確実に酷い目にあうな。うん確実。
「まあ仕事中は基本的に外には出てこないから…って、だから俺に喋りかけんなって!!」
全く謎な少年である。
「あの、お名前は…?」
「黒田日向。16歳。職業使用人。彌生兄さんとは実の兄弟であり主とメイドってとこかな。あ、ちなみに俺、ただ自己紹介しただけであんたと会話したわけじゃないから。いいか、彌生兄さんには絶対に言うなよ!!話したらぶっ飛ばすからな!いいか、絶対だからな!!じゃあ。」
一方的にマシンガントークを繰り広げ、部屋からこそこそ出て行った日向少年。日向…ひなた?名前一緒!?
こんな偶然あるんだ。
なんか親近感湧くなあ。
取りあえず、日向少年のことは黙っておくことにしよう。私も殺されかねないし。