二 億 円
部屋の探索で収穫は無かったけれど、二人のうち一人の使用人には会えた。お喋りな日向少年。似ても似つかない兄弟とはまさにこのこと。
それに、仕事中は部屋から出てこないということも分かった。
「朝と昼のうちに…屋敷をとことん調べなくちゃ。」
部屋から一歩出た瞬間、どこからか視線を感じた…気がした。
「…気のせい、かな?」
兎に角、屋敷を調べるんだ。
真っ直ぐな廊下をひたすら歩き進む。右側は常に窓があるだけ。左側は壁、もしくは番号を打ち込んである扉しかない。
しかもよく解らない番号順だし。
闇雲に開けようとしたが、全く動く気配はなかった。
…鍵無しの引き戸なのに。
どうしよう。探索するにも扉が開かないんじゃ何も探れない。
「だぁかぁらぁああああ!!!無闇に探りを入れるなってばぁぁああ!!彌生兄さんに殺されても知らないからなっ!?」
窓の外から私を発見したのだろう。箒を持ったまま私にビシッと指を差す。
「何もないって。この屋敷には何にもない。あるのは金と名誉と…狂気だけだよ。」
ドクン
一瞬、一瞬だけ…
日向少年の表情が歪んで見えた。
「おい、あんた。一つだけ良いこと教えてやるよ。
此処って純和風の御屋敷、って感じだろ?でも、内装や仕掛けまでそうとは限らないよ。」
内装や仕掛け?
「見た目に騙されんなってこと。」