二 億 円
「彌生兄さんっ!お待たせしました。それでっあのっ…一体何のお手伝いを?」
普段は絶対に手伝いなんてさせてくれない彌生兄さん。
俺は使用人。掃除炊事洗濯…そのような下働きしかさせてもらえない。いや、近くに置いて貰えるだけでも有り難いんだ。彌生兄さんは俺をもう弟とは見てくれないけれど…それでもいい。
そういう契約だから。
「日向。貴方には今から私の手伝いをして頂きます。私が仕事から戻るまでに、紙に書いてあるものを全て揃えておきなさい。いいですね?」
にこり、と優しく微笑む彌生兄さんはとても綺麗。
男の俺でもドキドキする。
「はいっ!責任を持って揃えさせて頂きますっ!」
彌生兄さんの役に立てる彌生兄さんの役に立てる彌生兄さんの
兄ちゃんの役に立てるんだ。
「揃えるもの揃えるもの…
口紅 指輪 向日葵
鎖 ペンキ(赤・黒) 子猫ちゃん
……なんだ?これ。」
よく分からないけれど、彌生兄さんが言ったことは絶対。これを揃えたら、少しは役に立てる…
考えるだけでわくわくした。
何の為に使うのか。刹那ならきっとすぐに気づいただろう。俺は今でもこの時の自分を怨んでいる。
「子猫ちゃんって…?」
よく分からないまま、俺は屋敷の倉庫へ駆け込んだ。