二 億 円
ギリッ
「いっ…!!」
昨日腕に刻まれた傷を思い切り掴まれる。
包帯には血が滲み、彌生様は満足そうに微笑む。
「残っているようですね。ですが…このままでは折角の名前が消えてしまいますね。」
考えるような素振りをし、ドアの奥を見やる。
「日向。頼んでおいた物、準備出来ましたか?」
ドクン 。
日向、少年…?
扉から入ってきたのは、真っ青な顔をした日向少年だった。私と目を合わさないよう下を向き、彌生様に液体の入った瓶のようなものを二つ、空の瓶を一つ渡す。
「余りはまた倉庫に戻しておきなさい。いずれ使うでしょうから。さあ、戻りなさい。」
コクリと頷き、出て行く日向少年。
そして扉が閉まる間際に見えた
泣きそうな顔
微かに聞こえた
「ごめんね。」という言葉。