二 億 円
「日向はとても私に忠実な使用人ですよ。私に服従し、私に全てを捧げている。とても良くできたお人形です。」
にこにこと愉快そうな顔で瓶を見つめながら話す。
「実は私の血の繋がった弟なのですよ。まあ、今は関係ないのですけれど。」
さらさらと、日向少年のことを話しだす彌生様。何故、こんなことを話すのか分からなかった。
「日向、怯えていましたね。」
ククク、と笑いを含みながら私の腕を掴む。
「何をあんなに怯えていたのでしょう?なにも、日向に危害など加えていないのに。」
瓶の中から独特の匂いが漏れる。頭が痛くなるシンナーのような匂い。
「………ペンキ?」
「ええ。貴女の名前が消えないように、色をいれておこうかと思いまして。」
色をいれる?傷跡に?
「そして永遠に私だけのひなたで有り続ければよいのです。」