二 億 円
ゆっくりと、傷跡から針を抜かれ、血液がじんわりと溢れ出る。
「私だけの、お人形さん。可愛い可愛いお人形さん。」
腕からは血液とペンキが滴り落ち、赤黒い液体が床へと伝う。
「ほら、ご覧なさい。これが貴女の名前ですよ。」
憂いを帯びた声でそう言い、傷跡を舌でゆっくりと舐める姿は獣でしかなかった。
腕を見ても、血やなんやらで文字なんて見えない。
うっすらと見えたのは
『 11 』 。
決してひなたではない。
私の名前、ではない。
「や、よい…様。私は…私の名前は──!!」
「貴女はお人形さんですよ。私だけの、可愛い可愛いお人形さん。」