二 億 円
「えっ…彌生様が、そう言ったんですか?」
正直信じがたい。
日向少年と会話をしただけでこんな罰を受けたのに
手当?話し相手?
そんなの可笑しい。
「あの変態は変態なりに、あんたのことを大切に思っているのよ。私たちとは違う意味で特別なの。」
大切?違う意味で特別?
刹那さんの言葉は今の私には理解できなかった。
「訳分かんないって顔ね。ま、まだ恋愛のレの字も知らないようなお子さまだもの。理解なんて出来ないでしょうね。」
「なっ…!!わ、私だって恋の一つくらいっ…」
思わずむきになって刹那さんに近寄ると、ふわりと甘い香りがした。
どこかで嗅いだことのある、私の思考を鈍らせる香り。
「むきになるようじゃお子さまよ。まだまだあの変態を理解するには時間がかかるわね。
ま、理解できない人間だっているけど。
もしあんたがその類なら…
逃げだす方法でも考えた方が身の為ね。」
クスリ、と笑う刹那さんの表情はとても苦しそうで
一瞬だけ
歪んでみえた。
そう
日向少年みたいに。
一瞬だけ
歪んでみえた。