二 億 円




「「あっ……──」」




目の前の茂みからは見覚えのある子犬のような男の人。


「ひな、た…」




私を見た瞬間、表情が強張ったことに少し胸が痛んだ。



「あっ…日向少ね「俺は悪くない!!!俺はただ兄さんの役に立ちたかったからっ…」」



目を見開き、自分に言い聞かせているかのようにただ叫ぶ姿は日向少年ではないようだった。




「悪くない悪くない悪くない悪くない!!!俺は兄さんの役に立ちたかったんだ兄さんの役に立てればそれだけでいいんだ!!俺はっ…俺は…兄さんの「日向。」」



一瞬で空気が凍てつくような冷たい声色。



声の方に目をむければ彌生様が鋭い目つきで立ち尽くしていた。



「あっ…兄さ「私は貴方の兄ではありません。」


きっぱりと言い放ち、日向少年の肩に軽く触れる。



「忘れたのですか?貴方を使用人に…側に置いておく代わりに兄弟という血縁を絶ったことを。私のことをまだ兄だと思っているようなら、今すぐこの屋敷から出て行きなさい。



私に家族など必要無いですから。」


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