二 億 円
「懐かしい……?」
その言葉に胸が騒ぎ出す。
そんなはずないのに、何故か動揺が隠せなかった。
「嫌でしょうね。好きでもない男に触れられ、抱かれ…忘れたくなるのも無理はありません。」
何を言っているのか、全くわからなかった。いや、わかりたくなかった。
「可哀想なお人形さん。好きでもない男に二度も抱かれるなんて。でも安心して下さい。
お兄さんよりは優しくしてあげますから、ね。」
時が止まったかと思った。
むしろこのまま、時なんて止まってしまえばいいのに。
そうすれば知りたくない、思い出したくない真実から目を背けていられたのに。