二 億 円
一章
お兄ちゃん
………
桜が綺麗な時期でした。
私は、お兄ちゃんと二人で公園に遊びに行きました。
かくれんぼをして、桜の木の下に隠れたら、いつの間にか眠ってしまいました。
目を覚ますと、日は沈んでいて、桜が赤く色付いていて、とても綺麗でした。
そして、知らないお兄ちゃんがいました。
私をじっと見つめたまま、ぼーっとしていました。
「んー?お兄ちゃんだあれ?おにいちゃんは?雅樹お兄ちゃんはどこー?」
少し困った顔をしたお兄ちゃんはすぐに微笑んでくれました
「…僕は、黒田彌生。君の名前は?」
とても綺麗なお兄ちゃんだなあ。と思いました。
「ひなた!!かげ ひなた。」
名前を言うと、綺麗なお兄ちゃんは桜みたいに桃色ほっぺになりました。
「彌生お兄ちゃんどこいったのかなあ?ひなたを置いて帰っちゃったのかなあ?」
幼い私は不安になり、綺麗なお兄ちゃんに尋ねました。
「お家はどこ?送ってあげるよ。」
微笑みながら私の手を握り、一緒にお家に帰りました。
お兄ちゃんの手はとても冷たかったけど、ひんやりとしていて、なんだか気持ち良かったのを覚えています。