二 億 円
いつものように夜ご飯を家族で食べて、お風呂に入ろうとしたときだった。
「ひなた。今日はお兄ちゃんと一緒に入ろう。」
笑顔を浮かべたお兄ちゃんが私の手を握り、提案をしてきた。
「よかったわね、ひなた。たまには雅樹お兄ちゃんと入ってきなさい。」
私の目なんて見ていなかった。
お母さんはいつも知らん顔だった。
「先に入っているから、必ず来いよ?」
小声で呟き、不気味な笑みを浮かべ去っていった。
お風呂場に行くと、優しいお兄ちゃんは消え、ただの欲の塊の男になっていた。
もう見慣れたけれど、怖さだけは消えなかった。
「脱げ。」
言う通りにした。逆らうなんて無駄だから。
脱ぎ終わると無理矢理手首を掴まれ、浴室に連れ込まれた。
鍵をかけ、完全な密室だった。
「いつもみたいにくわえろよ。」
ぐいぐいと押され、仕方無く口の中に入れる。
「ひなた。たまにはお前にご褒美やるよ。」
にやにやしながら私の目の前に差し出されたのは、見たこともない玩具のようなものだった。