溺愛プリンス
王子は遠い人
「はあ……」
知らず知らずに、今日何度目かのため息。
ハルを引っぱたいてしまった、あの夜からすでに2週間もたっていた。
テストも終わり、夏休み。
それでも時々、大学へ行く用事もあったりで忙しく過ごしてはいるんだけど……。
その間、ハルはあたしの前に姿を現していないんだ。
何も言わず、顔を見せないなんて事今までなかったのに……。
怒ってるよね……。
あんなふうに追い出しちゃったんだもん。
「はあ……」
「そんなに気になる?」
「……うん」
え?
パッと顔を上げると、テーブルを挟んだ向かい側で茜が可笑しそうに肩を揺らした。
「……な、なにが?……篤さんの事なら、もう……」
パチパチと瞬きを繰り返して、慌てて手元のグラスに手を伸ばす。
「違う。ハロルド王子!」
「……っ、ごほ、ごほ!」
ゴクンと飲みこんだ炭酸に思わずむせこんだ。
「もう。そんなわかりやすいのに……。素直になんなよ。意地張ってないで」
そう言った茜が、呆れたように目を細める。
「意地なんか張ってないし、なんでそこでハルなの?」
「じゃ、まだ篤さんのことで悩んでるの?」
「そ、そういうわけじゃないけど……」
茜には、篤さんとキス出来なかったのは言った。
でも、どうしてかってことまでは話してない。
……それなのに、そう思うってことは。
やっぱりそうなんだろうか……。