溺愛プリンス
たくさんの人に囲まれて、たくさんの人の笑顔に応えて。
たくさんのフラッシュを浴びて……。
ハルが、笑ってる。
『ハル王子って……本当に王子様だったのね』
「…………うん」
ブラウン管の向こうのハルは、知らない人みたい。
あれが、彼の本当の姿。
そばにいるって思っていたのは、日本の文化を学ぶためであって。
間違っても、あたしの為じゃない。
違うんだから。
勘違い、しないようにしなくちゃ。
彼の隣に寄り添うようにいるのは、ブロンドのキレイな女の人。
あの人が、ハルの相手なんだろうか。
あたしは、ハルの事なにもしらない。
知ろうとも思わなかったし、知りたくもないって思ってた。
思ってたのに……。
『ハロルド王子は、公務に積極的に参加され……』
ニュースキャスターの言葉さえ、まるでフィルターがかかってるみたいで。
遠くから聞こえてる。
あたしは、ハルの特別なんかじゃない。
そして、あたしも、そんなこと思っちゃダメなんだ。
目が、覚めた気がした。