溺愛プリンス
休み明け。
講義に出るために、大学へ来るとなんだかいつもと様子が違っていた。
その理由はすぐにわかった。
教室でノートをまとめていると、その人は真っ黒に日焼けしてあたしの前に現れた。
「よ!志穂、元気だったか~」
ポン!っと軽い感じで肩を弾かれて、ビクリと顔を上げる。
「っ!え、な……な、ヒ……」
「は? なんだって?」
手を耳に当てて、ん?と首を傾げたこの男。
そう。……ヒロトが帰って来たんだ。
秋の色が濃くなった銀杏並木。
その並木道が眺められるラウンジで、熱々のコーヒーを口に含んだ鮫島ヒロト。
優雅にカップをソーサーに戻してニヤリと含み笑いをした。
――嫌な予感……。
「聞いたぞぉ。お前、俺がいない間にハルといい感じだったらしいな?」
「……」
う!
否定できないぶん、グッと言葉を飲みこんだ。
これは、これ以上詳しく聞かれる前に先手必勝!
ゴクリと生唾を飲みこんで、キッとヒロ兄を睨んだ。