溺愛プリンス
「あ、あの!あたしがやりますっ」
慌ててしゃがみこむ。
篤さんは、そんなあたしをチラリと見て肩を揺らした。
「今は忙しくないし、俺やるよ。
にしても……めずらしいね、志穂ちゃんがボーっとするなんて。なにか悩み事?」
そう言って、篤さんはあたしを覗き込む。
優しいその眼差しに、思わず唇をかみしめた。
「もしかして……ハロルド王子の事?」
「……、はい」
たまらずうつむくと、篤さんは「そっか」と頷いた。
「えと……」
口を開きかけた、まさにその時だった。
―――ウィーーン
お店の自動ドアが開く音。
お客さんだ!
「いらっしゃいま…………」
そういいながら、立ち上がったあたしはそのまま固まってしまった。
真っ黒で高級そうなスーツ。
溶けてしまいそうなほど綺麗なハニーブラウンの髪。
端正な顔立ち、ブルーの瞳。
「ショー……ンさん?」
な、なんでこの人が……。