溺愛プリンス
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってください!
言ってる意味全然わかんないんですけど!」
ガタ!と立ち上がったあたしなんか興味なさげに、胸元から取り出した手帳に視線を落とすショーンさん。
「誰が見ても、立派なレディにならなくては。これは骨が折れそうですね」
「ちゃんと説明してくださいっ、なんなんですかいったい!
教えくれないなら、飛行機おろして!日本にかえしてー!」
大人げなく窓をたたいてそう叫ぶ。
でも、ショーンさんは表情一つ変えずに、こういったのだ。
「往生際が悪いですよ。
お覚悟を、お決めくださいませ」
「………………」
ハルといい、この冷徹執事といい、ローズベルト家ってこんな人ばっかなの!?
強引で、エラそうで!
これ以上何を言っても、きっと飛行機から下ろしてはもらえない。
力なくシートに座り込む。
目を伏せてしまったショーンさんから、窓の外に視線を移した。
眼下にぽつりぽつりと浮かぶ、綿菓子のような雲。
その下には、キラキラと太陽を反射させた海が広がっていて。
「……ハル」
着いたら、すぐに会えるの?
いったい自分の身に何が起ころうとしてるのか。
それでもあたしは。
ハルがいる国へと向かっていた。