溺愛プリンス
「ど、どうしてハロルド王子は、あの時図書館にいらしたんですか?」
そうなんだ。
まずはそこ。
そもそも、あそこに彼がいなければあたし達は今こうして一緒にお茶なんかしてない。
あたしの言葉に王子は何かを考えるように、あたしをジッと見つめてからニコリと微笑んだ。
「じゃあ、君はどうしてあそこにいたの?」
「え?」
「志穂と同じ理由だと思うけど」
「……」
とくにあたしの答えなんて気にしたようすもなく、王子はまた紅茶を口に運んだ。
ヒロ兄に、呼び出されたってコト?
王子様が?
はああ?
その時、タイミングよくスマホがメールの着信を伝えた。
王子が小さな本に視線を落としているのを確認してから、あたしは膝の上でスマホをタップした。
……ヒロ兄?
「ええええええッ!?」
ガチャン!
その相手はヒロ兄で。
メールの内容を見たあたしは、思わず立ち上がっていた。
その勢いで椅子が倒れた事なんて、全然関係なくて。
王子様が驚いて目を見張っていることすら、今のあたしにはどうでもよかった。