溺愛プリンス
王子様と仮面舞踏会
……ここが……。
目の前にそびえ立つのは、まるでお城。
全体をライトアップされたゴシック調の建造物は夜の闇の中、まるでそこだけが浮かび上がってるみたいだった。
「きれい……」
まだ外だというのに、お屋敷の中からクラシックが聴こえてくる。
ぽっかりと開いた入口に、真っ黒な服を着たSPらしき人がたくさん並んでいて。
ドレスアップした人々が、なんの迷いもなくその中に吸い込まれていくのを、あたしはただ呆然と眺めていた。
ドキン
ドキン
この中にハルが……。
やっと、ハルに会えるんだ。
「よし」
意を決して唇を引き結ぶ。
「さ、行きましょうか。志穂さま」
「はい」
エスコート役の彼に手を引かれ、あたしは一歩を踏み出した。