溺愛プリンス


スマホを握りしめたまま、立ち尽くす。
周りにいた学生がヒソヒソと何か話してる。


あたしはユルユルと崩れるように、腰を落とした。
近くにいたSPが椅子を元に戻したのと同時に、ストンとそこに座る。




「……うそ……」



王子の不審そうな視線が突き刺さる。




「大丈夫か?」




あたしは焦点の合っていなかった目をなんとか王子に向けた。



「……ヒロ兄が……放浪の旅に……」


「ホーロー?」



王子の眉間にさらにシワ。
あたしはスマホを王子に差し出した。


彼はそれを受け取ると、画面に視線を落とす。


しばらくして、王子はあたしにスマホを差し出しながら目を細めた。




「……何事かと思えば。ただの旅行じゃないか。大袈裟な」




それはそれは、呆れたような声。
あたしは反射的に、キッと王子を睨んだ。



「よく見てくださいッ!
王子の事言ってるんですよ?こんな無責任な事して、ただの旅行なわけないじゃないですか!」



腹立つ!

メールにはなんとも軽いノリでこう書かれていた。


―――――――――――
to志穂
―――――――――――

よぉ、久しぶり!
元気か?

突然だが俺は
エジプトに行ってくる
いつ帰るかはまた連絡
するから。

心配すんなよ!


あ。
ちゃんと図書館行った
んだろうな?

ハルの事頼んだぞ!
日本の文化・習慣
あとその他もろもろ、
お前がハルの勉強を
手伝ってやってくれ。

信頼できるヤツ
お前しか思いつかなく
て。
地味だしな!
大丈夫だろ!

じゃ、頼んだぞ!


ヒロト
―――――――――――――――




聞いてあきれる。

地味ってなに?
それとこれと何の関係があるの?
ほっといて欲しい。


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