溺愛プリンス
カツン カツン
静かな誰もいない空間に、あたしの靴音だけが響く。
窓から差し込む月明かりに照らしだされた部屋の中を、グルリを見渡す。
リビングは、柔らかなじゅうたんが敷き詰められていて。
そこに一際存在感を放つ暖炉。
それを囲むようにしてソファが置かれ、窓辺には瑞々しい緑が置かれていた。
キッチンも使われてる形跡はないものの、キレイに片付いていて。
すぐにでも生活できそうだ。
木製のダイニングテーブルには、ふたり掛けの椅子が用意されていた。
「可愛いおうち……」
クロードさんは、今は誰も住んでいないって言ってた。
ここ、何年かは空家のままだって。
でも、人のあたたかさがある。
誰が……、住んでたのかな……。
勝手に入ってあんまりじろじろ見るのは気が引ける。
あたしはソファに腰を落ち着けると、手の中に握りしめていたネックレスを身につけた。
あれ?
とその時、暖炉の飾り棚にいくつも写真がある事に気付いた。