溺愛プリンス

「…………」


でも、それはできなかった。
有無を言わさず、させてもらえなかった……。




「私(わたくし)どもも、少々不服ではありますが……。ハロルド様ご所望です。お戻りください」


「…………」




………な。

手首を掴まれて、背中に何かを押し当てられてる。

それが、あの図書館でのモノだってことはすぐにわかった。




「……」



見下ろす彼の瞳はすごく冷たくて。
あたしを黙らせるのには、十分だった。



おとなしくなったあたしを見て、彼はそっと手を離した。



「……」

「ハロルド様、志穂様がお待ちです」




そう言って綺麗に頭を下げた。
ハッとして彼の視線の先を見ると、いつのまにかそこに王子の姿が。


王子はゆっくり歩み寄ると、あたしと向き合うように立った。




< 21 / 317 >

この作品をシェア

pagetop