溺愛プリンス
「…………」
でも、それはできなかった。
有無を言わさず、させてもらえなかった……。
「私(わたくし)どもも、少々不服ではありますが……。ハロルド様ご所望です。お戻りください」
「…………」
………な。
手首を掴まれて、背中に何かを押し当てられてる。
それが、あの図書館でのモノだってことはすぐにわかった。
「……」
見下ろす彼の瞳はすごく冷たくて。
あたしを黙らせるのには、十分だった。
おとなしくなったあたしを見て、彼はそっと手を離した。
「……」
「ハロルド様、志穂様がお待ちです」
そう言って綺麗に頭を下げた。
ハッとして彼の視線の先を見ると、いつのまにかそこに王子の姿が。
王子はゆっくり歩み寄ると、あたしと向き合うように立った。