溺愛プリンス
「これって……」
真っ黒な髪。
瑠璃色の瞳。
間違いない……、ハルだ。
たくさん並んだその写真の、どの中にもハルがいた。
…………、ハル……。
笑ってる……。
キラキラ光る太陽の下、眩しいほどの緑の芝生の上で。
こぼれんばかりの弾ける笑顔。
頬をピンク色に染めて、吹き抜ける風に前髪をさらわれて。
ハルは……笑っていた。
ひとりで映ってる写真が多いけど、でも。
隠れるように置かれた写真の中に、大人の女の人の姿が。
艶やかな黒髪。
穏やかな笑顔。
小さなハルに頬を寄せた女性の存在が誰かなんて、そんなのすぐにわかった。
「ここが……、ハルとお母さんが過ごしたおうちだったんだね……」
視界がジワリと滲む。
はらりと落ちた涙が、写真を持つ手を濡らした。
ファブリック家で見た13歳のハルとはまったく別人。
無邪気で、悪戯っ子で。
幸せそうに、笑ってる…………。
本当のハルに逢えた喜びで、胸が震える。
切なくて、苦しくて。
愛おしい。
ハルを抱きしめたくてたまらないよ……。
―――その時だった。
玄関の方で、人の気配がしたのは……。