溺愛プリンス



「血は争えないという事か……」




え?




不思議そうに首を捻ったあたしを見下ろして、ベルト王は口元をふ、と緩めた。


その微笑がやっぱりハルに似ていて。
ドキンと胸が高鳴ってしまう。




「昔……、私の屋敷にひとりの日本人が使用人として入ってきた。控えめで、黒髪の美しい女性だった……」

「……」


まるで昔話を語るみたいに、遠い目をしたベルト王。
一歩、また一歩とうちの中に歩みを進める。


その表情はすごく優しくて。
ベルト王は、その人を愛していたんだって……きかなくてもわかった。




「恋に落ちるのに時間はかからなかった。……私は、運命だと思っていた」




ハルのお母さん……。
写真見てわかってたよ……、愛人って、そう言われてたかもしれないけど。
きっと、本当に愛されてたんだって。




「……しかし、死んでしまった。
レオも……ハルカも。

残されたハロルドに、私がしてやれることは、王位を継がせ強い立場にしてやることしかないんだよ」


「……」



自嘲気味に笑って見せたベルト王。



ああ、そっか。
そうだったんだ……。

< 214 / 317 >

この作品をシェア

pagetop