溺愛プリンス
「血は争えないという事か……」
え?
不思議そうに首を捻ったあたしを見下ろして、ベルト王は口元をふ、と緩めた。
その微笑がやっぱりハルに似ていて。
ドキンと胸が高鳴ってしまう。
「昔……、私の屋敷にひとりの日本人が使用人として入ってきた。控えめで、黒髪の美しい女性だった……」
「……」
まるで昔話を語るみたいに、遠い目をしたベルト王。
一歩、また一歩とうちの中に歩みを進める。
その表情はすごく優しくて。
ベルト王は、その人を愛していたんだって……きかなくてもわかった。
「恋に落ちるのに時間はかからなかった。……私は、運命だと思っていた」
ハルのお母さん……。
写真見てわかってたよ……、愛人って、そう言われてたかもしれないけど。
きっと、本当に愛されてたんだって。
「……しかし、死んでしまった。
レオも……ハルカも。
残されたハロルドに、私がしてやれることは、王位を継がせ強い立場にしてやることしかないんだよ」
「……」
自嘲気味に笑って見せたベルト王。
ああ、そっか。
そうだったんだ……。