溺愛プリンス


早く自分の立場を譲って……、それで……。

誰にも、なにも言われない場所へと上がらせてやりたいんだ。




ハルが。
ハルが大事だから。




「…………」




ファブリック家でのハル。
リュンヌ・メゾンでのハル。

大勢の人の前で、キレイな笑顔を浮かべたハル。


とびきりの笑顔で。

ひとり虚勢を張って。
まわりを威嚇して。
そうしていないと、きっとハルは……。


震える唇をキュッと噛み締めて、スカートを握りこんだ。



なにを言われるか
……わかってしまった。



静かに。
ただ静かに頬を伝う涙。


ゆっくりと頭を下げたベルト王。




「ハルのために
これ以上傷つかせないために」





――――ハルのため……。





「私達の前から、姿を消して下さい」

「…………」




…………、ハル……。



ベルト王の言葉が。
胸の中にストンと落ちてきた気がした。



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