溺愛プリンス


――――……
――――――……



どうやって、ここまで帰ってきたんだろう。
ベルト王が、とびきりの笑顔を残して帰っていった。

そこまではなんとか覚えてる。



ぼんやりとした頭で、窓辺に視界を巡らせれば。
優しい月明かりがカーテンみたいに差し込んでいる。

それはまるで、いつかハルが見せてくれた、ムーンロード。


あの時と今じゃ……こんなに状況がかわってしまった。
たった半年前のことなのに、ずっとずっと遠い昔のお話みたいだ。




……なんだか、夢の中みたい。

うんん、もしかしたら今までが夢で
あたしはただ、現実に戻っただけなのかもしれない。



それなら

夢は、夢のまま……
終わってくれたらよかったのに……




こんなに……
こんなに、痛い。





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