溺愛プリンス
―――よし。
飴色のドアを前にして、大きく深呼吸をする。
ギュッと両手を握りしめて、ドアに手をかざした。
と、その時。
あたしがノックをするよりも早く、ドアが開いた。
「! ……お、おはようございます……クロードさんっ」
慌てて背筋を伸ばして、背の高いクロードさんを見上げた。
「これはこれは志穂さま。 おはようございます」
視線の先のクロードさんは涼しい顔でそう言うと、穏やかに微笑んだ。
全然驚いてない……。
その笑顔はまるで、あたしがここへ来ることを最初からわかってたみたいな……。
「あの、クロードさん……実はその、お願いが……」
「その前に、朝食にしませんか?」
「え?でも、あの……」
朝早いって言うのに、クロードさんは完璧に決まっている。
あたしを追い越しながらそう言って、台所へと足を向けた。