溺愛プリンス
王子を誘拐せよ!
「……ほんとに、こんな場所にハルがいるんですか?」
すぐに車で連れて来られたのは、まるで要塞のような大きな建物だった。
車の窓を全開にして、ポカンをそれを見上げる。
……首、痛い。
「間違いないわ。 ほら、あそこ見て」
クロードさんから話を聞いたベスが一緒についてきていた。
あたしの身体ごと押しやって、自分も窓に身を乗り出すとピッとなにかを指差した。
?
ベスの視線の先。
そこに、見覚えのある人の姿を見つけて、思わず声をあげる。
「あ! ショーンさん?」
「屋敷の外で待たされてんのね……。ハルの執事なのになにしてんのよ」
「お屋敷? ここが?」
軍事要塞かと思った。
コンクリートで出来た、少し近代的な建物はあたし達の目の前にそびえたつ壁のようだ。
首を傾げたあたしに、ベスは苦虫をつぶしたような顔をする。