溺愛プリンス


やたら感じる喪失感。
目の前の光景に、思考回路もなにもかも止まっていた。

―――その時だった。





「マルク?」



背後からの突然の声に、強引に現実に引き戻された。



え?え?



すぐ後ろにいたマルクを振り仰ぐ。
「あーくそ……」なんて舌打ちしながら片手で顔を覆ったマルクは、渋々その場に立ち上がった。




「姿を見ないと思ったら……そんなところで何をしてるの?マルク」



柔らかな声色。
ザッザッて草を踏む足音に、やっと状況が飲みこめた。




「いや、なにってそりゃあ、野次馬ですよ」

「野次馬? マルク、後ろに隠れてる方はどなた?」




シンプルなツーピースを着た女の人が、不思議そうにあたしを覗き込んだ。




あたしたちは、見つかってしまったのだ。

それも…………。




王妃さま。
ハルのお義母さんに。



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