溺愛プリンス


……しまった!
ど、どうしよう……。


背筋が凍る、とはこのことだ。


固まったままでいると、さらに近づいてきた王妃さまが木陰から視線を送る。


ハルを見てたの気付かれた……。
これできっと今日の計画は終わる。

つまみ出されて、ハルに逢えないままあたしは日本に強制送還されるんだ。



そんな……。
そんなのって、ないよ……。


見つかっちゃったんだ。
もうしょうがない……。



こうなったら……!



「ッ……」

「な、おい!志穂っ」



背後に聞こえるマルクの声。
あたしはそれを振り切るように駆け出すと、茂みから飛び出した。




駆けて
駆けて!

少しの不安も残さず振り切るように。




足に力を入れて。
もつれる足でなんとか走る。


そして、あたしはお腹の底から叫んだ。





「っ……、ハル!」





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