溺愛プリンス
ちょっと距離がある。
でも、あたしの声は、まっすぐにハルの元に届いた。
「……!」
顔を上げたハル。
すぐに瑠璃色の瞳があたしをとらえ、ガタッと身を乗り出した。
真っ黒で、サラサラとしたやわらかな髪。
女の子もうらやむほどの、キレイな肌。
どれもパチリと当てはまった端正な顔立ち。
モデルも顔負けの、ルックス。
そんなハルが、あたしを見てなんともマヌケな顔で茫然としている。
ポカンと口を開けたまま、半分だけ立ち上がって、あたしを凝視する。
最初に見たハルとは大違いだな。
桜の木の下。
ピンク色の花びらのシャワーを浴びたハルは、一枚の絵のように完璧だった。
「ハル!一緒に行こうっ」
「……え?」
「この世界を飛び越えよう!」
―――ふたりで!
全速力で走る。
どんどん縮まる距離。
揺れる瞳。
半開きだった唇をキュッと結んだハル。
ゆっくりと瞬きをして
そして……。