溺愛プリンス
そんなあたしに、ハルは一瞬驚いたように言葉を失って……。
それから、うんと優しく笑って繋いだ手にキスを落とした。
「なら、おとなしく奪われてやるか」
「…………」
今度はあたしが固まる番。
手の甲にキスをする仕草がかっこよくて、色っぽくて。
心臓を鷲掴みにされたみたいだ。
ドギマギしていると、クイッと手を引かれハルはあたしを連れて走り出した。
あ……!
風のように駆け抜けながら、視界の中にハルのお義母さんの姿が映り込む。
怒ってるよね。
それとも呆れてる?
信じられないって、青ざめてるかもしれない。
恐る恐る振り返る。
「…………」
でも、視線の先にいたハルのお義母さんは、あたしの予想のどれにも入ってなくて。
優しく。
本当に、優しく微笑んでいた……。
彼女の唇が、ゆっくりと開く。
……え?
そして、潤ませた瞳を細めて、深く頭を下げた。