溺愛プリンス
王子としてじゃなく。
「こっちよ! はやくっ」
屋敷を出ると、ベスがすぐ近くまで車を回してくれていた。
ハルにつられて、そのまま車に乗り込んだ。
―――バタン!
勢いよくしまったドア。
それと同時に急発進する車。
その勢いで、シートに倒れ込む。
「―――、ショーン!急いでちょうだい、ここで追いつかれたら全部水の泡よ」
「かしこまりました」
へ? ショーンさん?
呆然としていた思考回路を手繰り寄せ、運転席を見やるとたしかにショーンさんがいて。
ポカンとしたままのあたしの手を握りしめたのは、ベスだ。
満面の笑顔であたしの身体に腕を回す。
「んもう、さすがね! 本当にハルを連れてきた!」
「でも、見つかっちゃいました……」
恐る恐る振り返れば、屋敷からたくさんの人が飛び出してくるところだった。
あちゃー……。
どうしよう……。
ベスはパッと手を離すとシートに座りなおして、チラリとお屋敷を振り替えった。