溺愛プリンス
「マルクさん、大丈夫でしょうか……」
ハルとベスの間でソワソワしながらそう言うと、ベスはプイッと窓の外に視線を投げてしまった。
「平気よ。 これでアイツもちゃんとしなきゃって思うハズだもの」
「え?」
それってどういう……?
キョトンと何度も瞬きを繰り返していると、ベスが満面の笑みであたしを覗き込んだ。
「志穂とハルがふたりでいなくなったんなら、いくらお父様でも察するでしょ」
「……」
昨日の今日だし……。
許してくれないんだろうなぁ……。
「走行中はシートベルト着用ですよ。おふたりとも」
助手席に座っていたクロードさんがこちらを振り返りながら言って、あたしは慌ててベルトに手を伸ばした。
緩やかな林道を疾走する車。
まだ、胸がドキドキしていた。