溺愛プリンス







「本当にここで大丈夫?」

「ああ、平気だ。……明日の朝、迎えをよこしてくれ」



心配するベスにそう言って、ハルはショーンさんに視線を向けた。



「かしこまりました。なにかありましたら、すぐに参ります」

「頼む」



ショーンさんの言葉にうなずいて、ハルは再びベスを見下ろした。


あたしとハルが車を降りたのはリュンヌ・メゾンだった。
この場所に昨日、ベルト王が来た事はみんなが知っていた。

昨日の今日。

そこへわざわざ来た事を、ベスは心配していたんだ。



……またすぐに連れ戻されてしまうんじゃないかって。




それでもハルは、ここへって強く希望した。

そっとハルを見上げると、その真っ直ぐな横顔に迷いはなかった。


ハルはなにも恐れていない。
だからあたしも……怖くなんてない。



「でも、ここに昨日お父様いらしたんでしょ? ね、志穂」

「……はい」


「きっと、あの人たちには俺たちの行動なんてお見通しだろ。わかっていて、逃がしたんだ」

「え?」





ハルは腕を組みながらため息まじりにそう言った。


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