溺愛プリンス
◇
「本当にここで大丈夫?」
「ああ、平気だ。……明日の朝、迎えをよこしてくれ」
心配するベスにそう言って、ハルはショーンさんに視線を向けた。
「かしこまりました。なにかありましたら、すぐに参ります」
「頼む」
ショーンさんの言葉にうなずいて、ハルは再びベスを見下ろした。
あたしとハルが車を降りたのはリュンヌ・メゾンだった。
この場所に昨日、ベルト王が来た事はみんなが知っていた。
昨日の今日。
そこへわざわざ来た事を、ベスは心配していたんだ。
……またすぐに連れ戻されてしまうんじゃないかって。
それでもハルは、ここへって強く希望した。
そっとハルを見上げると、その真っ直ぐな横顔に迷いはなかった。
ハルはなにも恐れていない。
だからあたしも……怖くなんてない。
「でも、ここに昨日お父様いらしたんでしょ? ね、志穂」
「……はい」
「きっと、あの人たちには俺たちの行動なんてお見通しだろ。わかっていて、逃がしたんだ」
「え?」
ハルは腕を組みながらため息まじりにそう言った。