溺愛プリンス
王子が残したもの
◇
「ん……、朝?…………」
重たい瞼をなんとか持ち上げる。
窓から差し込む柔らかな日差しに、ぼんやりとしていた意識が少しずつ浮上してくる。
そ、そうだ。
あたし昨日……。
一気に蘇る記憶。
気怠い身体に残る、甘い余韻。
あたし、いつのまに寝ちゃったのかな……。
あれ?
違和感に気付いて、振り返った。
「……え……」
まだ明るいうちから飽きるほど求め合っていた、その人の姿が見当たらない。
「ハル?」
シングルの木製のベッドに身を沈めたあたしは、フカフカのシーツを手繰り寄せた。
そこには人のぬくもりはなくて……。
いなくなって時間がたってる事は明らかだった。
呆然としたまま、ギュっとシーツを抱きしめる。
夢……だったのかな……。
あたしが描いた願望。
ハルのくれた夢……。
窓の外の、大きな木の枝葉が。
朝の穏やかな風に揺れていた。