溺愛プリンス
いったいどれだけの時間が流れたんだろう。
小さく溜息をつくと、きゅっと唇を引き結ぶ。
服着なくちゃ。
ベスが迎えに……、
「あれ?」
頬に伝う涙をグイッと拭ったところで、ハッとした。
――ない。
服が、ない!?
ちょ、ちょっと待って?
えーっと、昨日は確か……、そう、この部屋に入るなりハルに迫られて……。
それで、ベッドに……。
だから、脱いだ服はここにあるはずなのに。
シーツを体に巻きつけたまま、そそくさとベッドから降りる。
片手を床について、しゃがみこむとベッドの下を覗き込んだ。
「……ない……」
どうして……。
ま、まさかとは思うけど……、ハルに捨てられちゃったとか?
昨日、あたしが着てる服見てなんか変な顔してたし。
て、いくらハルでもそこまではしないよね。
とにかくはやく探さなくちゃ。
顔を上げたその時。
―――ガチャ!
ノックもなしに勢いよく扉が開く。
「ここか、志穂!」
「……!」
必死の形相で現れたのは、信じられない人だった。
「ま、マルクさ……?」