溺愛プリンス
王子とわたしの進む道
正装姿のハル。
舞踏会の時とはまた違ったその装いは、本当に王子様そのもので。
広場に集まった人々からは、歓声が上がる。
真っ黒な髪。
太陽の光を浴びて、キラキラと輝きを増す。
あたしがいる場所からじゃ、ハルの姿を確認するだけで精一杯。
みんな、そんな遠くのハルに向かって必死に手を振り、持っている旗を掲げた。
たったひとり。
あたしは取り残されたみたいにその場に突っ立ったままで。
表情も変えずに、ただ棒立ちしてるあたしは、この場でひどく浮いた存在だろうな。
ほんとうに……王子様だったんだ……。
心のどこかで、そうつぶやく自分に思わず呆れてしまう。
そんなの初めからわかってたじゃん。
だって、ハルは王子様としてうちの大学に来て。
日本の文化を学ぶために来ていたのに。
そんなあたしが、たまたまヒロ兄の目に留まって、それでたまたまヒロ兄がいなくなってからの後釜に任命されてしまった。
絶対に無縁の世界だと思っていた。
王子様のハルにとって、あたしみたいな庶民なんて眼中になくて……、モブキャラで。
だから、ずっとずっと信じられなかったんだ。