溺愛プリンス
連れてこられたのは、都会の真ん中。
ひときわ輝いていた超高層ビルの、最上階だった。
しかも特別なカードがないと、この階までは入れないセレブぶり。
「……こんな高級なお店来たの初めてです……。あの、あたし今日持ち合わせが……」
お財布の中に、3千円しか入ってなかったことを思い出す。
周りを見渡しながらそう言ったあたしの背中に王子がそっと手を添える。
「今日は俺が誘ったんだ。ご馳走させてくれ」
わわ! 当たり前のように触れた手に、思わずビクンと体が震えてしまった。
こんな素敵でオシャレなレストラン。
一面がガラス張りになっていて、夜景が一望できた。
それにしても……お客が誰もいない。
あたしの考えてる事がわかったかのように、王子は席に座ると楽しそうに笑った。
「このレストランは俺たちだけだ。遠慮はするなよ」
「……は、はあ……」
てゆか……それって貸切って事?
やっぱり王子様って世界が違うんだ……。
次々に運ばれてくる創作フレンチをなんとか口に運びながら、あたしは改めてそう思ってしまった。