溺愛プリンス
「…………」
――ポタリ
チケットに落ちた雫が、インクを滲ませる。
スカートから覗く太ももには、まだ紅い印。
ほんと、ハルは最後までイジワルだな……。
叫んでしまいそうな衝動が押し寄せてギュッと目を閉じた。
あたしを乗せた飛行機は、滑走路を駆け抜ける。
重い機体が重力に逆らって、広い空へと舞いあがる。
窓から下を見下ろせば、離れ行く異国の地に見覚えのある建物が見えた。
……あそこにハルがいる。
空の下、愛おしい彼を想う。
ハルは自分に出来る事を頑張るんだ。
そう決めた彼を応援したいと思う。
だから、あたしは……あたしに出来る事をするんだ。
そうしてあたし達は、別々に道に歩み出したのだった。